アナリティクスにはスコープという概念がある。データを扱う上で重要な概念だ。初心者にとって、それはある種、霧がかかっているように見えるかもしれない。

アナリティクス関連の書籍やネットにあるコンテンツを読むにスコープは「範囲」と説明されて、その内実は大まかに「ユーザー」「セッション」「ヒット」が存在するという。分かりにくいのはこの範囲と内容がどうマッチするのかが想像しにくいのが原因ではないだろうか?そして、それらを扱う際には注意が必要だ。
*GA4については後述する。

まず、身近な例から。あるところにバス釣り好きのAさんがいた。
店頭に張ってあったお買い得キャンペーンのポスターを見たAさんが釣具屋に入って、フィッシングジャケットを手に取り、よく見たが好みではないので購入せず店を見回し、ルアーが買いたくなり購入。店を出た。
翌日、再びこの店に訪れたAさん、 まだキャンペーンのポスターが張ってあるのを確認してもう一つルアーを購入して店を出た

ルアー

Aさんの話を釣具屋のサイトを訪問したとしてアナリティクスで考えてみる。
お買い得キャンペーンのグーグル広告をみたユーザーA(CID[クライアントID:123] )が釣具屋のLPを訪問(セッション発生・PV発生)LPから フィッシングジャケット の詳細ページへ(イベント発生[ 詳細ページへ のリンククリック] ・PV発生)拡大した写真や好みの色の在庫を確認したが、思ってたのと違うので、ルーアーの詳細ページへ。 (イベント発生[ 詳細ページへ リンククリック] ・PV発生 ) 欲しい!と思ったAさん、カート情報入力へ (PV発生) 。 カート情報確認 (PV発生) からサンクスページを表示させた。 (PV発生・コンバージョン発生[購入完了]・トランザクション発生 [トランザクションID:111] ) 当該サイトを離脱した。(セッション終了)
翌日またグーグル広告を見たAさん、当該LPを訪問 (セッション発生・PV発生) 。 ルーアーの詳細ページへ。 (イベント発生[ 詳細ページへ リンククリック] ・PV発生 ) もう一つルアー を購入するため、カート情報入力へ (PV発生) 。 カート情報確認 (PV発生) からサンクスページを表示させた。 (PV発生・コンバージョン発生[購入完了]・トランザクション発生 [トランザクションID:222] ) 当該サイトを離脱した。(セッション終了)
*ユニバーサルアナリティクス内での購入の流れを簡略化している。
*イベントは詳細ページへのリンクで設定した。

Aに関わる2日間のスコープを構成している要素(ユーザー・セッション・ヒットと各データ)を確認する。
ユーザー :1 (CID123)
セッション:2
ヒット :16
ヒットの内訳
・PV:11
・イベント:3
・トランザクション:2( トランザクションID:111と222)

ただこれだと、ディメンションが良く分からない。
スコープはディメンションと指標のセットで考える
結局のところ、スコープはディメンションに割り当てられた内容と指標の組み合わせに過ぎない。範囲は各ディメンションの内容とそれが指し示す指標、データとの関連性と言ってよいだろう。
例えばユーザースコープではCIDでユーザー1カウント、セッションスコープでは google/cpc でセッション2カウント、ヒットスコープでページ(LPでフィルタかけて)2カウント、となる。
ディメンションとの組み合わせた例を示す。
(ディメンション:内訳 指標:データ)
CID:123  ユーザー:1
参照元/メディア:google/cpc  セッション:2
ページ:LP ページビュー数:2
ページ: フィッシングジャケット の詳細ページ  ページビュー数:1
ページ: ルーアーの詳細ページ  ページビュー数:2
ページ: カート情報入力  ページビュー数:2
ページ: カート情報確認  ページビュー数:2
ページ: サンクスページ  ページビュー数:2

ちなみに各要素の粒度は下記の通り。ヒットはアナリティクスの最小単位である。
ユーザー>セッション>ヒット
*粒度の大小である。各要素に関わる数字の多い少ないではないので注意。

それで、何を注意すればよいの?

カスタムレポート、データポータルでのレポート作成時に注意

ここで、複数のユーザーがとあるサイトを訪問したデータを提示したい。
カスタムレポートで「UID」と「参照元/メディア」と「ページ」をそれぞれディメンション(軸)設定してデータを出してみた。指標は「ユーザー」、「セッション」「ページビュー数」。

エクセル出力結果

UID(ユーザーID)は企業が管理しているDB内にあるユーザーを識別する番号である。
*CID(クライアントID)はグーグルによって与えられえたユーザーを識別する番号。どちらもスコープは「ユーザー」
参照元/メディアでどっから来たの?を確認する。ユーザーがサイト閲覧を開始した(セッションがスタートした)時点のデータ。スコープは「セッション」
ページは当該ページを見た時点でのデータ。スコープは「ヒット」

この表を見るとUIDは1と2しかなく、ユーザーは「2」しかないのは明らか。しかし合計が「15」と表示されている。また、セッションに0(ゼロ)が表示されていることに違和感を覚える方もいるかもしれない。
それについてはセッション0 ゼロでもPV1、イベント数2、あり得る
を参照されたい。

このように、ディメンションと指標を適当に組み込みことのできるカスタムレポートの設定には注意が必要であり、当然、同じことがデータポータルのレポートにも言える。なので、複数のディメンション設定が必要な時は標準レポートのセカンダリディメンションを参考にしつつ、更にディメンションを追加する時には指標に問題が無いかチックしながら進めるしかない。

[原則]
ユーザースコープを軸(ディメンション)にして各データを表示させる場合:
ユーザーメニューにある、 ディバイス等 の標準レポートを参考にする。

セッションスコープを軸 (ディメンション)にして各データを表示させる場合:
集客メニューにある、参照元/メディア等 の標準レポートを参考にする。

ヒットスコープを軸 (ディメンション)にして各データを表示させる場合:
行動メニューにある、すべてのページ等 の標準レポートを参考にする。

カスタムディメンション
ところで、UIDはアナリティクスを普通に使っている分にはお目にかからないディメンション(軸)である。自分でアナリティクスの設定画面からこのディメンションを作らなければならない。これがカスタムディメンション。スコープの設定が必要で、UIDは一意のユーザーを示しているから、スコープはユーザーとなる。
*カスタムディメンションのスコープは必要に応じて「ユーザー」、「セッション」、「ヒット」、「商品」(商品の説明は本日の記事では割愛)で設定可能。

そういえばアナリティクス4(GA4)のディメンション設定にもスコープがあった。「ユーザー」か「イベント」(ユニバーサルアナリティクスのヒット)を選択できていた。

GA4の登場でスコープはどうなる?

GA4でもスコープの考え方は継承される。GA4にもカスタムディメンション設定はあるし、セグメントもある。セグメントについてはユニバーサルアナリティクスにはなかったイベントが追加されている。

GA4のカスタムディメンション設定スコープ(範囲)として、「イベント」と「ユーザー」が用意されている。「イベント」⁼「ヒット」と考えてよい。
当該ディメンションがイベント(クリックやページビュー等)レベルか?ユーザーレベルか?を設定する。

イベント ユーザー ディメンション

セグメントをどのレベル(ユーザー・セッション・イベント(ヒット))で設定するか?を選択するボタンが並んでいる。

カスタムセグメント
セグメントの違い

以上である。